日常でもよく使う言葉、「いま」ですが、フランス旅行でも頻繁に使うことになる単語です。
maintenant(マントゥナン)は、main(マン)手、と tenir(トゥニーる)握る、の現在分詞 tenant(トゥナン)を組み合わせた単語です。なので、現在手で握っている、というニュアンスが含まれます。
その手で一体何を握りしめているのでしょうか?仮に花束を握りしめているならば、その瞬間こそが「いま」を表すと考えた。王様であれば権力を握り締めている「いま」こそが永遠。
そんな人間の不可逆的な願望を、私たちの手を握る動作を介して「いま」と連想した古代フランス人の発想力が秀逸だと思いませんか。手を離した瞬間、消えて無くなってしまいます。
maintenant(マントゥナン)フランス語発音のコツ
さて、フランス語で、「いま」は、
maintenant
マントゥナン or メントゥナン
となります。
main の「ain」は、[ ɛ̃ ] 開いたエンの鼻母音で、
tenant の「an」は、[ ɑ̃ ] 後方のアンの鼻母音です。(◯ルビ部分)
音節は、タンタンのリズムで、2音節で発音します。
main/tenant
マン/トゥナン
(*真ん中の「te」の[ ə ]短いウが消え落ちて、発音的には子音のみの[ t ]となります。母音の支えを失った[ t ]は[ n ]と一つの子音となり [ tnɑ̃ ] と1音節になります)
パリと田舎で異なる2つの発音 maintenant(マントゥナン)
問題は、パリを始めとするパリ周辺地域では、マントゥナン
地中海地方の南フランスでは、メントゥナン と発音されること。
どちらが良い悪いということはないですが、[ ɛ̃ ] 開いたエンに関しては、北と南で発音が明らかに分かれます。
母音の台形図に従えば、main の「ain」は、[ ɛ̃ ] 開いたエンの位置なので、南仏風の メントゥナン の方が発音記号にかなった伝統的なフランス語の発音のように見えます。
*フランス語の母音の位置の確認については、以下の記事をご覧ください。
しかしながら、パリ周辺地域では、maintenant の「ain」は、日本語発音のアン[ ã ]に聞こえます。
つまり、一般的には、
[ ɛ̃ ] 開いたエン = [ ã ]日本語のアン
の発音で通用することになります。
むしろ、日本語の「アン」の方がパリっ子っぽい発音です。
さて、誤解を招かないよう繰り返しになりますが、ここでは東京弁と大阪弁の違いのように、パリ弁と南仏弁の2通りをご紹介しておきます。
- パリっ子ぽく都会風な響きにしたい場合は、マントゥナン
- スペインやイタリアに近い南仏訛りの発音であれば、メントゥナンとなります。
フランス語では頻出する鼻母音 [ ɛ̃ ] 開いたエンですが、北と南で発音が異なるということを抑えておいていただけたらと思います。
[ ɛ̃ ] 開いたエン の綴字(表記パターン)
最後に、鼻母音 [ ɛ̃ ] 開いたエンに該当するフランス語の綴字を以下にピックアップしていきます。これらの綴りのある単語は、パリっ子風に自信を持って[ ã ]日本語のアンと発音していただいて大丈夫です。
[ ɛ̃ ] 開いたエン = [ ã ] 日本語のアン | -in -im -yn -ym -ein -eim -ain -aim -(i)en -(y)en -(é)en 特別なケース: -en -un(パリ周辺地域) | vin(ヴァン)ワイン timbre(タンブる)切手 syndicat(サンディカ)労働組合 sympathie(サンパティ)好感 plein(プラン)いっぱいの Reims(らンス)都市名:ランス main(マン)手 faim(ファン)空腹 mien(ミアン)私のもの moyen(ムワイアン)中間の、手段 européen(ウろペアン)ヨーロッパの examen(エグザマン)試験 lundi(ランディ)月曜日 |